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Photo du rédacteurMie Tanaka Faucher

大人が第二言語習得するには

 日本語教師養成講座を受けていて、「なるほど。」と思ったことは数多くありますが、本当に驚いたことが2つあります。まず、私たち日本語母語話者が学校で学んだ「学校文法」と第二言語としての日本語教育では文法が違うということ。用語や捉え方が違うということなのです。もう一つは大人に日本語を教える場合、まずはていねいな言い回しから教えるということでした。その方が生徒の不利益にならないという理由からです。

初級では「です」「ます」調を覚えてもらうことから始めます。

『〜です』

名詞やイ形容詞(美しい、長い、高い、広い など末尾がイで終わるもの。学校文法では形容詞)、ナ形容詞(名詞を修飾する時に語末がナになるもの。静か、便利、すてき、など。学校文法では形容動詞)に「です」をつけると短い文をつくることができます。

『〜ます』

動詞に関して言えば、まずは「〜ます。」という語末が「ます」のマス形から入ります。動詞の語彙やそれに伴う助詞を覚え、生活でよく使用する名詞を組み合わせて、自然な会話を状況に合わせて使用できるようにしていきます。日本語には敬語(以前、敬語は尊敬語、謙譲語、美化語の3分類でしたが、2007年2月2日に文化審議会の国語分科会により示された「敬語の指針」により、今は尊敬語、謙譲語1、謙譲語Ⅱ、丁寧語、美化語の5分類に分かれています)があり、特に仕事上の付き合いやあまり親しくない相手、目上の人に対してのコミュニケーションや公的な場のスピーチなどで使われています。フランス語でも初めて会った人やあまり親しくない人、会社の上司に対して、'TUTIYER'は使わないですよね。日本語は主語を省くことができる言語です。言わなくても分かるからと言う理由と会話の中で主語の'Je 'に当たる'私'を連発すると自己主張が強い人だと思われてしまうかもしれないと言う理由からです。また、あなたに当たる'Tu' 'Vous'も言わなくても分かる場合は言いませんし、言いたい場合は「〇〇さんは〜」と言って話している相手に明確に伝えます。と言うことで、日本語の親疎関係は主語を切り替えて'VOUVOYER'にすれば良いと言うフランス語の仕組みと同じではないのです。また、会話の中でその場にいない人に対しても尊敬語を使用することもありますので、習得にはコツが必要です。まずはていねいな言い方を覚え、状況や必要に応じて敬語を少しずつ覚えるようにしていきます。

初級の終わり頃にようやく「タ形」(末尾が「た」になる過去形など)、「ナイ形」(否定を示す)、「辞書形」(辞書に載っている形)からなる「普通形」を学びます。友達同士や同年代の仲間などには普通体で話した方が親しみがわくと言う利点があります。同年代の日本語母語話者と会話したり、好きなアニメ見て練習をすれば、普通体やくだけた表現を習得することができます。

日本で大学に進学したい人や日本企業で日本語のレポートを書かなければいけない人、また、日本語の本を読みたい人は「だ」「である」調を学ぶ必要が出てきます。大まかに言うとこのような流れになります。


 これは日本人が生まれてから自然に日本語を習得する順番とは違います。

赤ちゃんの頃、大人たちはいわゆる赤ちゃん言葉なども使いつつ、普通体でゆっくり話しかけます。物心ついた頃には自然なスピードで普通体で会話をするようになり、周囲の環境から様々な語彙や言い回しを自然習得しますので、時折驚くような言い回しをすることもあります。特に女の子は母親の口癖を真似る傾向にありますので、同年代の男の子よりも大人びた言い方をする傾向にあります。親が躾を行う場合、「好き嫌いしないで、食べなさい。」「早く来なさい。」などの命令形をよく使います。疑問形は日本語のクラスでは終助詞の「か」を文末に付けるように習いますが、日常会話では「宿題は終わったの⤴️(語尾を上げて)」「今日、学校で何したの⤴️(語尾を上げて)」「テストどうだった⤴️」など、助詞を省いたり、必ずしも「か」がつくわけでもなかったりします。フランス語でもカジュアルな言い方では省略や主語と述語の倒置をしないで文末を上げて質問をすることが多いですよね。

日本人は大人になっていく過程で、間違った言い方をしたら訂正されて、学校で色々なことを学習し、正しい言葉を徐々に覚えていきます。

日本にも仲間内の造語や流行語などがありますが、使用語のサイクル(流行り廃れ)は短くなる傾向にあります。LINEやメッセンジャーなどSNSで生まれる造語や略語も多用されています。「日本語は乱れている」と言う人もいますが、言葉は生き物だと思いますのである程度は仕方のないことだと思います。長い目で見れば、今時、侍やシュバリエのような言い回しをしていたら相当おかしい人になってしまいますよね。時代劇の中にしかそんな言葉は出てきませんし、時代劇でさえも現代に合わせて若干の修正はされてい流のが現実です。

中高校生くらいになると、周りの大人に対し、学生や塾であれば先生、お友達の親御さんが主なコミュニケーションの相手になると思いますが、ていねいな言葉で話すようになっていきます。スポーツなど部活動をすると上下関係が生まれますので、先輩後輩という間柄で敬語を少しずつ身につけていきます。そこで、社会言語学的に誰とどのようなスピーチレベルで話せばいいのか学んでいくようになります。

本格的に敬語を意識するようになるのは就活(就職のための活動)の面接のためや社会人になってからです。ちなみに日本人でも敬語の使い方を間違っている場合や言い間違いをする場合はあります。言語はコミュニケーション手段なので、間違いを恐れて使わないのはもったいないことだと思います。

 最後に余談ですが、私の最初の日本語の生徒さんはパリで学生をしていた頃、ベビーシッター(jeune fille au pair)をしていたフランス人の女の子(当時2歳半)です。依頼されたマダムには二人の娘さんがいましたが、長女が子供の頃、イギリス人のベビーシッターをつけて、英語とフランス人のバイリンガルにしたとのことでした。フランス語と英語は近いので、ある程度の年齢になっても習得できると考えたマダムは次女には別の言語を覚えさせたいと思い日本人のシッターを探していました。マダムは日本に行ったことはなかったのですが、大学で日本語を専攻していたようで、日本語も話していました。次女の彼女への教育は徹底していて、日本人の保育園に通わせていたくらいです。その保育園には彼女以外に一人だけフランス人と日本人のハーフの男の子がいましたが、生粋のフランス人は彼女だけでした。私の仕事は週4回、夕方3時ごろ保育園にお迎えに行って、ベビカーに乗せてお散歩したり、公園で遊んだり、夕ご飯を作って食べさせると言う内容でした。もちろん日本語で。言うことを聞いてくれない時はフランス語で話すこともありましたが、ここはマダムの厳しい指示で、日本語を中心に会話をするようにしました。保育園でも友達と日本語で遊んでいるので、言っていることもかなり分かってきていて、発音もとても良かったです。私は1年弱だけシッターをして日本に帰りましたが、彼女が小学生になった頃一度だけ会いました。その頃には、驚くほど流暢な日本語を普通体で話していました。目を閉じたら日本人の子供と話しているような感じでした。

言語習得は早い方が良いと言いますが、マダムの戦略には脱帽です。

 ただし、第二言語習得は第一言語が発達していないと上手くいかない場合もありますし、継続には環境が必要ということもあります。

第一、第二言語を既に習得している大人には「大人の学び方」がありますので、ご安心ください。何事にたいいても、決して遅いということは無いのです。



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